僕は君の名前を呼ぶ


「ここは、わたしたちを素直にしてくれるね」


図書室の隅。

本棚に寄りかかって腰をおろした俺たち。


隣にいる彼女がポツリと言った。


「そうだな。仲良くなったのも、告白したのもここだしな」


「初めてのキスも、でしょ?」


「そうだな」


普段なら“キス”という言葉に過剰反応しているところだけど、ホコリ臭いけど誰もいない図書室がやけに心地よくてそうさせなかった。


「大丈夫だよね?わたしたち」


「遠距離かあ…。不安だな。彩花ちゃん、浮気すんなよ?」


「わたしが浮気するわけないじゃん!海斗くんこそ浮気しちゃダメだよ?海斗くん、何気に女子に人気あるって知らないでしょ!?」


「え、何それ初耳!」


「調子に乗らないの!」


そう言うと、彩花ちゃんは俺の肩を軽く叩いた。


「元カノさんのことも心配してるんだから…」


急にしおらしくなったと思ったら…。


そんな心配、必要ないのに。


杞憂だよ、杞憂。


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