僕は君の名前を呼ぶ


「私も親待たせてるから、もう行くね」


「都、またね」


「彩花、春休み遊ぼうね。青木もまたね!」


渡辺も去って行ってしまった。


3年前の春。

彩花ちゃんを見つけた桜の木の下に残された俺たちふたり。


なんだか、感慨深い。


「彩花ちゃん、そこ立って」


俺は彩花ちゃんに、桜の木の下に立つよう指示してカメラを構えた。


「海斗くんも入ろうよ」


「いいからいいから」


俺は彩花ちゃんを切り取りたいんだ。


俺が入ったら、意味がない。


ファインダー越しに彩花ちゃんが微笑んだ。


こっちだけを見て、俺のためだけに笑ってくれている。


俺は溢れそうな涙をこらえてシャッターを切った。


カメラをおろすとシャッター音が合図したみたいに、俺の目からは涙が流れた。


「ちょ、海斗くん!?」


< 274 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop