僕は君の名前を呼ぶ
「私も親待たせてるから、もう行くね」
「都、またね」
「彩花、春休み遊ぼうね。青木もまたね!」
渡辺も去って行ってしまった。
3年前の春。
彩花ちゃんを見つけた桜の木の下に残された俺たちふたり。
なんだか、感慨深い。
「彩花ちゃん、そこ立って」
俺は彩花ちゃんに、桜の木の下に立つよう指示してカメラを構えた。
「海斗くんも入ろうよ」
「いいからいいから」
俺は彩花ちゃんを切り取りたいんだ。
俺が入ったら、意味がない。
ファインダー越しに彩花ちゃんが微笑んだ。
こっちだけを見て、俺のためだけに笑ってくれている。
俺は溢れそうな涙をこらえてシャッターを切った。
カメラをおろすとシャッター音が合図したみたいに、俺の目からは涙が流れた。
「ちょ、海斗くん!?」