僕は君の名前を呼ぶ
俺の涙に気づいた彩花ちゃんはこっちに近づいてきた。
「わりぃ。何でもないよ」
卒業するのがさみしいとか、彩花ちゃんと離れたくないとか、涙が出た理由はあったけどそれ以上に、1年前まで想うだけの恋をしてきた俺の隣で彩花ちゃんが笑ってくれているのに感動したのが一番だった。
「…一目惚れだったんだ」
「えっ?」
「一目惚れしたんだ、彩花ちゃんに。3年前の入学式の日」
「嘘…。そんな前に?ごめん、わたし海斗くんのこと知ったの3年生になってからだ」
「ハハッ」
泣いたり笑ったり、忙しい。
知らなくて当然だよ。
俺は何もアクションを起こさずただ想っていただけだら。
俺はズズッと鼻をすすり続けた。
「教室から外見たらここに彩花ちゃんがいて、綺麗な子がいるなあって見てたらこっちを見て笑ってくれた気がして…」