僕は君の名前を呼ぶ


「あと、安物だけど…」


俺は指輪を彩花ちゃんに握らせた。


「まだ付き合って短いけど、俺の気持ちはこの先変わらないから」


「海斗くん…」


みるみるうちに、大きな瞳に涙をためていく彩花ちゃん。


喜んで、くれたんだよな…?


高1と高2のときにバイトをしてて、本当によかったと思った。


バイト代をむやみに使わずに貯金していて、本当によかったと思った。


おかげで、大切な人にこうして自分で稼いだ金で時計や指輪を買うことができたんだ。


「俺のこと嫌いになったらその指輪捨ててな」


「嫌いになんか、なれないよっ」


ああ、もう。
俺のお姫様は嬉しいことを言ってくれる。


「それなら良かった。4年後、迎えに行くから。そのときはちゃんとした指輪渡す。だから、待ってて」


「うんっ」


彩花ちゃんは両方の目に涙を溜めながら、何度も『ありがとう』と言った。


俺の方こそ、『ありがとう』だよ。


彩花ちゃんが隣で笑ってくれているからこそ、俺はこんなに幸せなんだ。


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