僕は君の名前を呼ぶ
「前にさ、名前の由来の話したの覚えてる?」
「今はわからないけど調べたらわたしに教えてくれる、ってやつだっけ」
「そう。それで聞いたんだ母さんに」
海のような大きくて広い心で何事も受け止め、誰かの道標になれるように。
誰かの道を確かに照らす、そんな存在になれるように。
そんな願いが込められているらしい。
「この世には星の数程人がいるけど、俺はその中からちゃんと彩花ちゃんを見つけ出して彩花ちゃんの道標になるから。だから、彩花ちゃんは俺の隣で輝いてて」
君の手の中にある、俺たちだけの宇宙と同じように。
「…って、クサいかな」そう照れ隠しをした俺の横で、彼女は泣いていた。
もう、君の涙は拭わないよ。
これからはそれができなくなるから。
ただ今だけは、君が悲しい涙を流さないよう、あの星に願おうと思うよ。