僕は君の名前を呼ぶ

束の間のラブ・コール



──時は流れ、3年後。


俺は母校での教育実習を終え、7月の採用試験に向けての勉強に励んでいた。


あの日、ふたり約束した夢の実現まであと少しってところだ。


…ただ。

最近はずっと彩花に会えていない。


前までは、長期休暇のたびに…というか、お金と時間さえあれば無条件で彩花に会いに行っていた。


まあ、まだふたりで雪景色は見れていないのだけれど。


もちろん、彩花も多忙の間を縫ってこっちに来てくれた。


それがここのところは試験勉強で忙しすぎて全く会えていないのだ。


彩花はN県の大学にいるが、卒業後はこっちに戻ってくる。

だから採用試験は俺と同じ地元のものを受けるんだ。


試験のときに会えればいいのだけど、遊びに来るわけじゃないから難しいかもしれない。


ああ、彩花不足…。
早く会いたい。


俺は発作的に引き出しを開けて、あるものを取り出した。


何度も、何度も、空で言えるくらい読んですっかりボロボロになってしまった、彩花からの手紙。


3年前、彩花が地元を経つ前にくれたものだ。


これを読むとなぜか落ち着くんだ。


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