僕は君の名前を呼ぶ
なんだかゴム臭くて、まだ固く少し歩きにくい新しい上履きが廊下をキュッキュと鳴らす。
中学3年間着続けた学ランもクリーニングから返ってきたばかりだからまだノリがついていて、パリパリしている。
桜と同じように長い冬を越えて無事春を迎えることができた自分に少しくすぐったくなりながら、まだ誰もいない廊下を歩いた。
期待と不安でじんわり温まっている俺の体とは対照的に廊下はひんやりしていて、心地よく感じた。
階段をのぼって教室にたどり着きドアの前で深呼吸をひとつ。
意を決してドアを開けるとそこには誰もいなかった。