僕は君の名前を呼ぶ
──
─────
3年前から使っている腕時計に視線を落とすと、夜の10時をさしていた。
「ゲ、もうこんな時間!?」
今日は彩花に電話する日だったのにすっかり忘れていた。
「んあ、帰るのか? 主役が帰ってどうすんだよぉ! 夜はまだまだこれからだぞ!」
だいぶ酒がまわったらしく口調がおかしい隆太が言った。
どう考えてもお前らの方が多く飲んでるし、主役も何もないと思うのは気のせいだろうか。
「とにかく俺は、彩花に電話しなきゃなんだよ!」
慌ててカバンを持ち上げ帰ろうとすると、行く手を夏樹に邪魔された。
「電話ならここですればいいじゃ~ん」
確かにここは居酒屋の個室だけども。
「俺も彩花と話したいし」
「俺も俺も!」
月に何度もないリラックスタイムになる予定だったのに。
「ったく、しょうがねぇなあ!」