僕は君の名前を呼ぶ
《もしもし》
彩花はいつものように、5コール目で電話に出た。
「もしもし、俺」
《俺? わたしの周りにそんな名前の人はいませーん。それともオレオレ詐欺の方ですか? もれなく警察に通報しますけど…》
どうやら俺の彩花お嬢様は相当ご立腹されているらしい。
隆太と夏樹と呑むと時間を忘れてしまうんだよなー。
ムードメーカーでひょうきん者のふたりがいるから会話がなかなか止まらないし。
「っあー、海斗だってば。待たせてごめんな」
《大丈夫。許す。それにしてもずいぶんざわざわしてるね。今外出先かな? それなら無理しないでも…》
個室と言えど喧騒が彩花に伝わってしまったらしい。
「あー、そのことなんだけど…、っておい!」
隣にいた隆太にケータイを取り上げられてしまった。