僕は君の名前を呼ぶ


《もしもし》


彩花はいつものように、5コール目で電話に出た。


「もしもし、俺」


《俺? わたしの周りにそんな名前の人はいませーん。それともオレオレ詐欺の方ですか? もれなく警察に通報しますけど…》


どうやら俺の彩花お嬢様は相当ご立腹されているらしい。


隆太と夏樹と呑むと時間を忘れてしまうんだよなー。


ムードメーカーでひょうきん者のふたりがいるから会話がなかなか止まらないし。


「っあー、海斗だってば。待たせてごめんな」


《大丈夫。許す。それにしてもずいぶんざわざわしてるね。今外出先かな? それなら無理しないでも…》


個室と言えど喧騒が彩花に伝わってしまったらしい。


「あー、そのことなんだけど…、っておい!」


隣にいた隆太にケータイを取り上げられてしまった。


< 309 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop