僕は君の名前を呼ぶ


「外行ってくるから」


俺は夏樹からケータイを取り返すと、居酒屋の外に出た。


梅雨前のぬるい風が俺の頬を撫でた。


この風は彩花の周りで吹く風と違うのだと思うと、少し悲しくなった。


「彩花、ごめんな。いきなりあいつら騒いじゃって」


《ううん、びっくりしたけど嬉しかったよ。久しぶりにふたりの声聞けて》


「そっか」


彩花との電話は3日ぶりだけど、もう何年も声を聞いていないかのような気分になった。


ダメだな。

酒が入ると少しのことで悲しくなる。


彩花が関わってくると特に、だ。


《痩せたって…大丈夫?》


「ああ。心配しないで」


《どうせ海斗のことだから、採用試験の勉強に夢中になりすぎてご飯食べなかったんでしょ? だめだよ、食べなきゃ》


彩花には、何でもお見通しってことか。


「まあ、それもあるけど…」


《あるけど?》


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