僕は君の名前を呼ぶ
──
─────
「彩花!」
「あっ、海斗っ!」
空が赤くなってきた頃、俺の実家のある最寄り駅で彩花と落ち合った。
人目も気にせず、熱い抱擁。
恥ずかしがり屋の彩花が俺の背中に腕をまわしてくれた。
そんな些細なこともいとおしいと思える。
「いらっしゃい、彩花ちゃん。おかえり、海斗」
ふたりで手を繋ぎ、色んなことを話しながら久しぶりの我が家へ。
母さんが変わらない笑顔で俺たちを迎えてくれた。
彩花が我が家に来たのはこれで3回目。
付き合う前──あの大雨だった夜に1回。
彩花が地元を経つ前に、1回。
恋人を家に連れて来るというのはとても恥ずかしい。
まだしばらく慣れそうにないなぁ。