僕は君の名前を呼ぶ


「恋人って彩花ちゃん…、だっけ」


脳内の記憶を呼び起こしているのか、自信なさげに里香先輩が言った。


「そうです。覚えていてくれたんですね」


1年生の頃、サークルに入ってしばらくしたときに男の先輩に『海斗はいい男なのに女の気配を匂わせない』と言われた俺。


先輩がそう言ったのを聞いた夏樹は俺の許可なしに、俺が高校の同級生と遠距離恋愛をしていることをしゃべった。


自分のことは彩花と同じように秘密を貫くくせに、他人のこととなるとすぐこうだ。


その場にいたメンバーに、まあ根掘り葉掘り聞かれたさ。


もちろん、里香先輩にも。



「まあ、ね。遠距離、まだ続いているんでしょ?」


『“まだ”続いているんでしょ』


里香先輩は意味深な言い方をしたけど、俺はとりあえず無視をした。


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