僕は君の名前を呼ぶ
虚無、刹那、真夏の27時。
俺は、夢を見た。
幸せだった、あの頃の夢。
その証拠にほら、
俺の隣には、いとしい彩花がいる。
今はもう俺のものではない、彩花がいるんだ。
──
─────
寒いけど、妙に心地がよい。
周りを見渡すと、一面の銀。
“銀世界”という言葉がぴったりだと思った。
銀、というのはあくまで比喩的なものだと思っていたけれど、それは俺の思い違い。
キラキラとまぶしいほどに、雪が輝いている。
そして、隣には彩花が。
つまり俺は、彩花と一緒にすごすのを叶えられなかった冬のN県に来ているのだ。
なんて滅茶苦茶な夢なんだ。
この先、叶えられるはずもないのに。