僕は君の名前を呼ぶ


なあ、彩花。


俺は彩花の笑顔を守れていたか?


彩花は「幸せだよ」と言ってくれた。けれど俺は本当にお前を、一瞬でも幸せにできたか?


「海斗のことが好きすぎて海斗を傷つけるのが怖いの…」


そうか。


いつだって俺たちは考えていることは同じだったんだな。


傷つくのが嫌いな俺たち。

傷つく痛みを知っている俺たち。


だから、お互いを傷つけないように、お互いに自分を犠牲にして、お互いを守ろうとして。


そのせいで、俺は彩花を傷つけた。


どうしたら、俺たちは幸せになれたのだろう。


今更しても遅い問いを、誰かに投げる。


「わたしたちに、“輝く未来”ってあったのかな」


「彩花…お前……」


何でそんなことを言う?


「想い合っていたはずなのに、潰れちゃったんだね…」


…嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!


彩花に何を言わせているんだ俺は。


彩花の口からそんなこと、聞きたくない。


だってそれは、俺もよくわかっていることだから。


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