僕は君の名前を呼ぶ


走り出した車内ではラジオがかかっている。


ラジオの方にふと意識を集中させたときにちょうど流れていた曲はアナクロの曲だった。


あの日ふたりでいいねと言った曲。


肩を寄せてふたりで一緒に聞いた曲。


やっぱり、君を忘れるには思い出を作りすぎたみたいだ。


ほら、こんなところにも散らばっているんだから。


俺は少し胸が痛くなった。


「どう? 彩花ちゃんと。うまくやってるの?」


「あー、いや。別れました」


「えっ!?」


急ブレーキをかけるんじゃないかと思えるくらい、里香先輩は相当驚いた様子だった。


「ごめん、わたしのせいよね…」


「違いますよ。ガタが来たんです」


里香先輩がまったく関与していないと言ったら嘘になる。


けれど里香先輩は俺にきっかけを与えたに過ぎない。


「わたしが慰めてあげようか?」


「あは、考えておきますね」


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