僕は君の名前を呼ぶ
「変わったね、アンタ」
「え?」
「いや、何でもないよ。さー着いた! わたしがおごるからたくさん食べなよ!」
里香先輩が車を止めたのは、仕事帰りのサラリーマンでにぎわうカレー屋だった。
彼女の話によると、最近オープンした本格的なカレー屋らしい。
「ずっと来たかったんだけど、女ひとりじゃ入りにくくてねえ」
激辛カレーを頬張りながらそんなことを言う里香先輩。
その食べっぷりは予想を裏切らず豪快だ。
辛いのが苦手な俺は中辛カレーを食べながら里香先輩の話を「ふぅん」と聞いていた。
「海斗くん、また痩せた? ちゃんと食べろって言ったじゃん」
「そこそこ食ってますよ」
「モヤシなんだから“そこそこ”じゃダメなの! どうせ今日はご飯なしで済ませようとしてたんでしょ?」
「………」
「さては図星ね」
「ボーッとしてるとあっという間に夜になってて、飯の存在忘れてるんすよね」
特に最近──彩花と別れてからは、それに拍車がかかった気がする。
「『ボーッとしてる』って黄昏か? 青年よ。どうせ彩花ちゃんのことを考えているんでしょ」
「はは…」
やっぱり里香先輩にはお見通しのようだ。