僕は君の名前を呼ぶ
俺の体には、こんなにも彩花という存在が残っていて、嫌でも比べてしまう。
啼き方も、果て方も、まるで違う。
俺の下にいる彼女が彩花のかわりになんか、なりやしない。
だから、彼女を抱くことで欲望だけでも満たして彩花を消そうと思った。
消せるわけなんか、ないのにな。
「もっと…っ」
そう言って彼女は顔を歪めた。
なんだよ。気持ちいいんなら、ハッキリ言えばいいのに。
言わせたくて、俺は乱暴に彼女を抱いた。
敏感なところを探して、そこばかりをせめた。
俺らしくない。ああ、俺らしくない。
俺の下でよがるこれが彩花なら、もっと優しく抱けるのに。
彩花。
君を忘れようとしているだけなのに、こんなにも心が痛いよ──。
俺は眠りに落ちる前に、フロントガラスから夜空を覗いた。
今日も東京の空に輝く星はまばらだった。
宇宙では煌々と輝いているはずなのに、ここまで光が届かないなんて。
「ここにいる」と叫んでいても、届かないなんて。
そんなの、悲しすぎる。
俺の心の中で輝くはずの北斗七星と名もない星は、もう死んでしまったのかもしれない。
だって、君がいなければ、俺の存在理由もなくなるんだ。
意識がなくなるまでそんなことを考え続けると、夜が明けていた。