僕は君の名前を呼ぶ
目を覚ますと、体の節々が痛かった。
昨夜はお互いに何度か果てて、そのあとは裸のまま車内で眠ったんだっけ。
「ん…」
まだ覚醒しきらない意識。
うつろな目で外を見ると知らない住宅街に車は止まっているようだった。
そういえば、里香先輩が何年か前に車を買ったとき、「スモークのオプションつけたの!」と自慢してたっけ。
外から行為を覗かれた可能性は、まずないか。
いやはや、本当は昨日はどうかしてた。
車の中で…。し、車内プレイ…。
周りを見ると衣服が散乱している。
ああ、やっぱりこれは現実なのだ。
「ハァァ…」
俺は自分がした失態に、ため息を漏らした。
「ん…」
隣で眠る里香先輩が体をよじった。
起こしてしまったのかもしれない。
「……と…」
俺の名前?
里香先輩の夢の中で、俺は一体何をしているのだろうか。
ユリのように白い彼女に手を伸ばす。
俺はハッとして触らずに手を引っ込めた。
俺、今なんて思った…?
「ハハッ」
いつから俺は、こんなに軽い男になったんだろう。
もう、自嘲の笑みしか出ない。
どうせ、好きな人ひとり守れない男なんだ。
このまま、この人と落ちるところまで落ちてしまいたい。