僕は君の名前を呼ぶ
例えば、彼女を恋人とするのか。
例えば、すっぱり関係を切るのか。
けれど、彼女がふと見せる悲しげな表情を思い出すと、そばにいてあげたいと思ってしまう。
俺は、彼女を彩花と重ねているだけなんだろう。
けれど彼女を選んでしまったのは、きっと、彼女が俺の近くにいるから。
いつでも会える距離にいたから。
結局俺はいつまでも、弱くてズルい男のままなのだ。
──ピンポーン
家のインターホンが鳴ったのは、部屋が温まってきたので朝食を作ろうと立ち上がったときだった。
こんな早い時間の来客だなんて、大方の予想はつく。
80%…いや、95%の確率で、ウチのドアの前に立つのは最高にうざったいあの男。
だけど残りの5%に賭けてみたくもなったから仕方なくドアを開けた。