僕は君の名前を呼ぶ
「…ゲッ」
ドアを開けるとやっぱりそこには三浦夏樹がいた。
しかし、表情はいつもと比べてかなり堅い。
瞳の奥で、メラメラと憤怒の炎が見えるような気もする。
──…憤怒?
俺、夏樹を怒らせるようなことしたか?
ここ最近、夏樹と接触すらしていないのだが。
「お前、ふざけるのもいい加減にしろよ!」
「な、夏樹!?」
夏樹は玄関にあがるなり俺の寝間着の胸ぐらを掴んできた。
それも、すごい力で。
「お前ふざけんなよ! 自分勝手な理由で彩花のこと傷つけやがって! 彩花がどれだけ悲しんでるかわかってんのかよ!」
「………」
逃げたのは、俺だ。
今更彩花にどうこう言えるわけない。
そんな資格ない。
白けた目で夏樹を見ると、胸ぐらを掴むて手に更に力がこもった。
「彩花…毎晩ひとりで泣いてるんだぞ? 下宿先の親戚にバレないように声を殺して…。
アイツ、『海斗の考えはわかっているつもりだから、これ以上迷惑かけられない』って、全部自分で抱えてるんだぞ!」
夏樹の力に耐えられなくなり俺はバランスを崩すと、夏樹と一緒にそのまま玄関に倒れてしまった。
夏樹はそれでも力を緩めず俺に馬乗りになる。