僕は君の名前を呼ぶ


「遠距離だ? 会えないだ? はァ? ふざけんな! 実際俺も言える立場にはいないけど、彩花が一番傷ついたのはお前に別れを告げられたときだ。

最大限に傷ついたんだ。もう怖いものなんてないだろ。N県行って彩花に頭下げて来い!」


「でも…」


「『でも』じゃねぇ!」


次の瞬間、かけていたメガネがぶっ飛んで床に落ちた。


右頬はヒリヒリジンジンする。


俺…夏樹にビンタされた?


「俺が一度惚れた女を傷つけたんだ。このくらいの制裁は相応だろグーじゃないんだから感謝しろ」と夏樹は言い放った。


「今年の春に、お前からも彩花からも『あと少しの辛抱だ』って腐るくらい聞いた。今は冬だぞ? 春は目の前だぞ? 今辛抱しねーでどうすんだよ!」


「辛抱…」


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