僕は君の名前を呼ぶ
ギクッと固まる男、ふたり。
振り向くとそこには彩花の親友、──渡辺都がいた。
夏樹にとっては中学の、俺にとっては高校の同級生だ。
そして隣には俺たちより落ち着いた雰囲気の男。
いつか聞いた、彼氏の“タクヤくん”だろうか。
「やっほー、来ちゃった」
渡辺は大きな荷物を持ちながら「ちょっとそこまで」みたいなテンションで言うから驚きは倍増。
地元からここまでは、距離的にはそこまで遠いわけではないが、電車で来るとなると何本か乗り換えが必要となるから時間がかかるのだ。
荷物を見ると、本当に観光で来た感じには見えるが、俺にはそれ以外の本当の目的があるように見えて内心ヒヤヒヤしている。
「わ、渡辺か。久しぶり」
「青木も篠田も元気してた? 東京に来ることになったから、彩花に青木の住所聞いちゃった」
「な…」
ほら。予想的中。嫌な予感ほど当たるもんだ。
「ククッ…夏樹のアホっぽさは変わんねえな。隣は青木くんだよね。俺、都の彼氏のタクヤ」
「ど、どうも」
夏樹は隣で「タクヤ先輩、相変わらずキツいな!」と叫んだ。