僕は君の名前を呼ぶ
俺が作っているのは高校時代のバイト先のレストランで仕込まれた、ふわとろオムライス。
4人分ってこともあり使う卵の数はさすがにケチったけど、十分ふわふわとろとろに仕上がった。
ソースは俺が考案した特製レシピで作った。
彩花にも好評で、よく作ってあげたものだったな。
家族と彩花以外に、このオムライスは作ったことはなかったのに…。
夏樹に思い出を奪われたみたいで、ちょっと悔しい。
さあ、できた。
俺は溢れ出しそうな想いを飲み込んで、食卓に皿を並べた。
「いやぁ、タクヤ先輩の味覚がお子様並みだなんて知らなかった!」
オムライスをモグモグしながらしゃべる夏樹。スッゲー汚い。
そういうお前も、食べ方が子ども以下で人のこと言えないけどな。
「勘違いするな、夏樹。俺はオムライスが大好きなだけだ」
そう。オムライスをリクエストしたのは、タクヤくんだ。
渡辺から俺が料理をできるということを聞いたらしく、俺のオムライスを食べるまで帰らない! だなんて言う始末。
年長者とは到底思えない振る舞い。