僕は君の名前を呼ぶ
「悪かったね、青木。タクヤがわがまま言って。こんな年になっても味覚がお子様だなんて、笑っちゃうよね」
それに比べて、渡辺は大人な対応をしている。
正反対なふたりだけど、惹かれるべくして惹かれたのだろう。
ふたりはとてもお似合いだ。
「…それで、本題なんだけど。彩花が………」
「…あ、渡辺。そのことなら、俺がこってりしぼっておいたから大丈夫だぞー」
神妙な面持ちで口を開いた渡辺の言葉を、夏樹があっさりと遮った。
「えっ、そうなの!? せっかくこっちまで出て来たのに」
「ビンタもしておいたから」
「あら、やるじゃない」
「それはやりすぎじゃないかぁ?」
俺が口を挟まないのをいいことに、盛り上がる三人。
俺が悪いのは目に見えて明らかだから、胸がチクリチクリと痛む。
「まぁ」
場を仕切り直すように声を上げると彼女はこちらに向いた。
「彩花が青木に傷つけられたのは許しがたいことだけど、これから彩花を守っていけるのも青木だってわかってるから。
私たちは彩花の味方であるのと同時に、青木の味方でもあるの。つらいときには頼って欲しい」
「俺からもお願いするよ、海斗くん。橘は大切な後輩のひとりなんだ。橘に幸せになってもらいたいから」
心優しい友人を目の前にして、俺は唇を噛んで、うんうんと首を振ることしかできなかった。
自分が愚かすぎて言葉も出ない。