僕は君の名前を呼ぶ
グッバイ、サイテーな俺
夕方を少し過ぎて夏樹が盛大なあくびをしたところで、渡辺とタクヤくんが家を出た。
「スカイツリーと東京タワーはしごしてきます!」
そう言った渡辺は完全におのぼりさん。
地元から東京はそこまで離れていないのに。
見送ったふたりの背中が小さくなると、夏樹が口を開いた。
「コレ、お前にやるから、出発までにやるべきことやってこい」
そう言って夏樹にぺらりと渡されたのは、明日の朝イチの新幹線のチケット。
「………は?」
ワンテンポは遅れてようやく俺が口にしたのは、ただただ驚きの言葉。
これをどうしろと?
混乱で頭が回転しない。
「だーかーらー、明日朝イチでN県に行ってこい。彩花に謝ってくるんだ」
「あ、明日?」
「そうだ。明日だ。海斗はヘタレだからな。行かないとどんどん先延ばしにするだろ」
「うぅ…」
言い返せない…。
夏樹の言う通り、『会わせる顔がない』とか『謝り方がわからない』とか言って、N県に行くのを後にまわすかもしれない。