僕は君の名前を呼ぶ
でも、今日の明日で!?
「てか、何で夏樹が今こんなもの持ってんだよ」
「聞いて驚くなよ? 今日のことは前からひとりで計画してたんだ。俺なら海斗を絶対説得できると思って」
「まぁ、渡辺とタクヤ先輩に会ったのは予想外だったけどな」と夏樹は笑った。
…ったく。なんて用意周到なヤツなんだ。
夏樹は、俺が口喧嘩にめっぽう弱いことをわかってこんなことしたんだろう。
俺は、口じゃあ誰にも勝てないタチだからな。
チケット代を気持ち上乗せして返すと、夏樹は上機嫌で帰って行ったので、俺も家を出た。
向かうのはもちろん、里香先輩のもと。
どう終わらせるか、答えは見つかっていない。
恋愛感情とは別で、何か情のようなものが彼女に対してわいたのかもしれない。
けれど、俺はここでピリオドを打たなければならないのだ。
彩花のために。
自分のために。
“輝く未来”のために。
もう日は暮れている。急ごう。
かじかむ手をこすり合わせながらケータイで里香先輩宛にメールを作成しようとすると、着信を知らせる画面に変わった。
表示されたのは、タイミングよく里香先輩の名前だった。
フゥ、と息を吐き、それから通話ボタンを押した。
「もしもし」
《海斗くん。今から時間作れない? 話したいことがあるの…》
なんとなく、声の調子がいつもと違う。
時間はない。俺は指摘するのをぐっとこらえて話を続けた。
「わかりました。場所はどこで?」