僕は君の名前を呼ぶ


彼女と彼──剣人(けんと)さんは高校時代、仲のいい友達同士だった。


彼女の中ではいつしか恋心が芽生えていたけれど、バカし合える関係が心地よくて、自分から告白して関係が崩れたら…と怖くなって現状に満足していた。


関係に変化を求めたのは、剣人さんの方だった。


高校2年生の夏休み、剣人さんが里香先輩に想いを告げて交際がスタート。


晴れて恋人同士になってもふたりの関係は友達時代と変わらず良好。


3年生になり進路選択の時期になり、彼女は東京の大学に進みたいということを剣人さんに伝えた。


夢に近づくために、どうしても師事したい教授が東京の大学にいるから。


剣人さんは地元に残っての進学を希望していた。


離ればなれになってしまうけれど、剣人さんは応援すると言ってくれた。


ふたりは勉強に勉強を重ね、お互いの志望大学に見事合格。


里香先輩は悲しみの涙をこらえて地元を離れた。


ふたりの関係に亀裂が生じたのは、大学4年、卒業を目前にした頃だった。


< 380 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop