僕は君の名前を呼ぶ
「彩花っ。彩花…!」
「うん」
『ここにいる』とでも言うように、そっと俺の背中に彩花の腕がまわった。
やっぱり俺は、“ここ”じゃなきゃ、笑えないし、泣けもしない。そして幸せにもなれない。
「彩花。ほんとうに、ごめんな…」
涙で声が震える。
彩花の前で情けないな、俺。
だけど目の前に彩花がいるんだ。
ずっと会いたいと思っていた彩花が。
冷静でいられるわけがない。
「海斗のバカ。ほんと、バカ。バカバカバカっ。わたし…寂しくて、苦しくて、毎日つらかったんだから」
「…ごめん」
彩花を抱きしめて気づいた。
少し痩せたことを。
元々、食べても太りにくい痩せ型の彩花。
体重は変化しにくいと本人は言っていたのに、俺にもわかるくらいに痩せてしまっている。
大切な彩花を、こんなふうにしてしまった…。
「もう彩花のことは絶対に離さない。大切にする。だから、俺にチャンスをくれないか…?」
「チャンス?」
「うん。必ず彩花を幸せにしてみせるから、俺についてきて欲しいんだ」
繋いだこの手はもう二度と離さない。
だから、俺と一緒にいて欲しいんだ。
俺の隣で笑っていて欲しいんだ。