僕は君の名前を呼ぶ
「実はね、お父さんのところに行こうと思ってたの」
予想外の一言に、俺は目を丸くした。
しかし、感情を隠すようにすぐさま元に戻す。
「…なるほど。それで、その大荷物か」
「ふふ。海斗のことだから、『もしかして彩花、俺のところに行こうとしてたのかな』とか思ってたんじゃないの?」
「むー…」
そうだよ。
そうさ。そう思ったさ。
同じタイミングで同じアクションを起こしたんだから、少し運命感じちゃったさ。
俺は彩花に愛してもらえているけれど、さすがに実のお父さんには勝てない。
ただでさえ彩花は、お父さんっ子なんだから。
「でも、どうしてこの時期にお父さんのところへ?」
「大学卒業したら、実家に戻らなきゃいけないし、原点回帰」
「そっか…」