僕は君の名前を呼ぶ
「紹介て、…」
いつか挨拶したいとは思っていた。
けれどふたりはもう戸籍上では親子でないわけで。
会うのは難しいのだと、心の中で決めつけていたからびっくりだ。
「…嬉しい」
「海斗ならそう言ってくれると思ってたよ」
彩花の実の父親。
彩花が大好きなお父さん。
ちゃんと言わなきゃだな、彩花。
『お嬢さんは僕が大切にするので安心してください』って。
お父さんの代わりに、そんなたいそうなことは言えないけれど、きっとお父さんの分も大切にしていきます。
俺は真っ白の中で静かに、少し先の未来を想像した。
隣にいるいとおしい彩花の、微笑んだ顔を見ながら──。