僕は君の名前を呼ぶ


──
─────


彩花からの着信があったのは、それから2時間後。


天文台の近くの喫茶店で時間を潰していたときだった。


とりあえずホットコーヒーを注文したのだけれど、手をつけられるわけがなく。


冷めてゆくコーヒーを前に、ずっと、考えてた。


彩花のことを。これからのことを。


どうして俺は、自分の気持ちをコントロールするのがこんなに下手くそなんだろう。


彩花のことになると、冷静じゃいられなくなる。


近くにいるのに『欲しい』と思ってしまう。


俺の世界に閉じ込めてしまいたいと思ってしまう。


どんどん。どんどん、わがままになっていく。


これは、今も昔も変わらない。




不安で不安でたまらない。


けれど、俺のイチバンは彩花だから。


だから彩花が望むことに従おうと思うよ。


彩花がどんな決断をしようと、受け入れるよ。




…冷えて渋味のましたコーヒーを、無理矢理胃に流し込んで、喫茶店を出た。


< 401 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop