僕は君の名前を呼ぶ
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彩花からの着信があったのは、それから2時間後。
天文台の近くの喫茶店で時間を潰していたときだった。
とりあえずホットコーヒーを注文したのだけれど、手をつけられるわけがなく。
冷めてゆくコーヒーを前に、ずっと、考えてた。
彩花のことを。これからのことを。
どうして俺は、自分の気持ちをコントロールするのがこんなに下手くそなんだろう。
彩花のことになると、冷静じゃいられなくなる。
近くにいるのに『欲しい』と思ってしまう。
俺の世界に閉じ込めてしまいたいと思ってしまう。
どんどん。どんどん、わがままになっていく。
これは、今も昔も変わらない。
不安で不安でたまらない。
けれど、俺のイチバンは彩花だから。
だから彩花が望むことに従おうと思うよ。
彩花がどんな決断をしようと、受け入れるよ。
…冷えて渋味のましたコーヒーを、無理矢理胃に流し込んで、喫茶店を出た。