僕は君の名前を呼ぶ


──それって…。


「うん。海斗のことだよ」


「…彩花っ」


一目も気にせず彩花を抱き寄せた。


すぐに彩花の腕も俺の背中にまわってくる。




…ああ、もう。何なの、この子は。


こんなに俺を熱くして。こんなに俺を夢中にさせて。こんなに俺を満たして。


想った分だけ…いや、それ以上に想い返してくれる。


俺だって、ちゃんと想っているのに追いつけないのが悔しい。


愛しているのに平等じゃないのがむかつく。


それでも、もっと想い合いたい、愛し合いたいと思えるのは彩花だからだ。


こんな素敵な女の子、もう絶対出会えない。


俺の大切なお姫様。




抱き締める腕を緩めて、おでことおでこをコツン、とすり合わせた。


「…海斗、また泣いてる」


「誰が泣かしてると思ってんの?」


お互い泣き顔で笑い合う。


ふたりの間に、優しい時間が流れる。


“これが幸せ”って、心から思える。




おかえり、彩花。


それから、ありがとう。


戻ってきてくれてありがとう。


必ず幸せにする。


だから、必ず幸せになろう。




──ずっと、愛してる。


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