僕は君の名前を呼ぶ
「ちょっと、わたし抜きでお父さんと何話して来たのっ?」
プンプンする彩花。
どうやらひとりだけ蚊帳の外で、ご立腹のようだ。
プンプン怒る彩花を見るのも久しぶりだな、って思ったり。
ああ、こんな些細なことで心が満たされるなんて、俺も相当重症だな。
「男同士の約束だから、内緒」
「えーっ! チェッ、つまんないのっ」
毎日毎日、小さな幸せの積み重ね。
派手じゃなくても、大きくなくても、小さな幸せが舞い降りて来てくれたら、それでいい。
それが俺たちの幸せだから。
時々ぶつかって。
時々泣いて。
呼吸するのもつらくなるくらい悲しくなっても、最後には笑えたらいいな。
ふたりで笑い飛ばせたらいいな。
彩花は俺の幸せを。
俺は彩花の幸せを。
それぞれ願って、想い合って、時を重ねていきたいな。
まだ少し、先の話だけど、きっと大丈夫。
“輝く未来”はもうすぐそこまで来ている。
──『彩花さんのこと、大切にします。幸せにもします。お父さんの分もきっと、必ず』
──『…絶対だぞ』
──『はい!』