僕は君の名前を呼ぶ
「ね、彩花」
「………何ですか、青木センセ」
「これでも、意地悪って言う?」
「っ!」
俺の手の中にあるモノを見て彩花は目を見開いた。
「な、な、ななな何これ」
「何って、指輪だけど」
「それは見ればわかるって!」
予想通りの反応をくれた彩花に嬉しくなった。
俺は努めて柔らかく微笑み、彩花を見つめた。
「橘彩花さん。少し先になっちゃうけど、“青木センセ”としてきちんと食えるようになったらさ、俺と結婚してくれませんか」
ヤベ。今日言うつもりではいたけど、まさかこのタイミングになるとは。
心の準備もなくさらりと自然に口から出たから、半端なく緊張する。
「交換返品きかないよ?」
「何それ。俺が離さないし」
「ほんとにわたしでいいの?」
「俺を一生独身にさせるつもりなの?」
「~~~~~~!」
「返事は?」
「よろしくお願いします」
目を赤くして涙をこらえる彩花をそっと抱きしめた。
手探りで彩花の左手薬指に指輪をはめた。