僕は君の名前を呼ぶ
大学4年間のバイト代で買った指輪。
安物だけど、生活はきちきちだった。
バイトは掛け持ち。ハシゴするのも終電逃すのも当たり前。削るのは食費と睡眠時間。
少しストイックになりすぎて、夏樹に心配されるくらい体重が落ちたこともあった。
『大学生活、4年もあるんだぞ!? そんな焦る必要ないだろ!』
『お前の気持ちはわかる。けど、そこまでして指輪買っても彩花は喜ばないぞ』
確かに俺は焦っていた。
早く彩花を幸せにしたい。早く彩花を自由にさせてあげたい。早く、早く…。
ああ、そうだった。これは俺の悪いクセ。すぐに周りが見えなくなって、自分を犠牲にしてしまう。
夏樹の言葉で目を覚ました俺は、バイトもそこそこにセーブした。収入は減ったけど、生活に余裕が出てきた。
大変だったけど、彩花の表情を見たら、良かった、と思えた。