僕は君の名前を呼ぶ
俺はきっと、君との今を、そして未来を照らし続ける道標でいるから。
だから彩花。どうか俺を見失わないでいて──。
「青木センセ…」
腕の中で小さく彩花がささやいた。
「前にさ、海斗のことを一番に“青木先生”って呼びたいって言ったじゃない?」
「え? あー…うん」
「もうひとつ夢があってね。一番に海斗から“青木先生”って呼ばれたいの」
「彩花…」
俺は、自分の胸がそっと熱くなったのを感じた。
ふたつでひとつの夢。ふたつでひとつの幸せ。一緒に叶えてみせようじゃないか。
「まだちょっと先だけど、絶対だから。今は、“俺の”って印、ね」
「うんっ」
俺たちを見守るかのように咲いた桜。
静かに伝えた大切な人への想いを聞いてくれていただろうか。
──あの日。
空を舞う桜の花びらを見つけていなかったら、こんな“輝く未来”は見れていなかっただろう。
これからも、毎年この季節が来たら、あの日のことも今日のことも思い出すだろう。
忘れたくない記憶ではあるけれど、どうしても色褪せてはしまうから。
だから、咲くことを忘れないで。
俺も忘れないから。
彩花の幸せを願い、彩花に幸せを願われ、彩花の笑顔を願い続けること。