僕は君の名前を呼ぶ


──ブォン


車がエンジンをふかせる音が聞こえたので後ろを振り向くと、大きな車がすぐそこまで迫ってきていた。


とっさに俺は歩道側にいる橘さんの腕を引いて俺の方に寄せた。

車が通りすぎるとふわりと風が舞い、甘い香りが漂ってきた。


「…ゴメンッ、危ないと思ったからつい」


「ありがとう」


腕なんか無理矢理引っ張ったからきっと痛かっただろう。

それなのに橘さんは嫌な顔ひとつせずに『ありがとう』と言った。


「俺がこっち歩くよ」


俺は橘さんとかわって歩道側を歩くことにした。

…最初からこうしてればよかった。


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