僕は君の名前を呼ぶ
そのまま視線を下に落とすと、木の下に一人の女の子が立っていた。
なぜこんな時間に木の下にいたのか、今となっては不思議に思う点もあったが、この時の俺は彼女の美しさに目を奪われ、そんなことなんか考えている余裕がなかった。
風に揺れる茶色の長い髪が光の反射で時々キラキラと光って見える。
肌は雪のように真っ白だ。
でも不健康さはどこにも見当たらない。
白い肌とは対照的に、彼女の薄い唇は赤く染まっていた。
今にも背中から羽が生えてどこかへ飛んで行ってしまいそうな美しさと儚さを持つ女の子だった。
俺にはそんな儚さが桜みたいだと思えた。