僕は君の名前を呼ぶ
彼女の秘密
6月のある金曜日。
この日も梅雨らしくシトシト雨が降り、図書室では本が湿気を吸って空気が悪くなっていた。
エアコンは一応動いているが、生ぬるい空気しか吐かないから飾りにしか思えなかった。
俺も橘さんも図書委員の仕事に慣れてきた頃だった。
「橘さんさ、元気?」
「ど、どうしたの?青木くん…わたしは元気だよ」
橘さんはそう言うとマッスルポーズをして見せた。
…かわいい。
確かに橘さんは元気だ。
元気にはかわりないのだが、俺は笑顔のない理由がどうしても気になっていて。
彼女の中に、何があるのか。
何が彼女から笑顔を奪ったのか。
心の闇を覗いてみたくなったんだ。
決して好奇心なんかではなかったけど、失礼なことだとわかりつつも聞いてしまった。