僕は君の名前を呼ぶ
静かに涙を流す橘さんを見て俺の体は頭で考えるよりも先に動いていた。
思わず彼女を抱きしめた。
彼女は小さく震えていた。
こんな小さな体に計り知れない何かを抱えていたんだよな…。
「つらかったよな、話してくれてありがとう」
高校2年生までは家族は円満で、義理の父親も彼女に対して本当の娘のように接してくれていた。
彼女も義理の父親を信じて暮らしていた。
義理とは言え信じていた父親にそんなことをされた彼女は心に深い傷を負ってしまったのだ。
彼女は何も言っていなかったが、きっとこの事件のせいで笑うことを忘れてしまったのだろう…。
──俺には何が出来るのか?