僕は君の名前を呼ぶ
俺はどれくらいみとれていたのだろうか。
まばたきを忘れた目が春のあたたかな風にさらされて、次の瞬間には涙が溢れていた。
ぬぐってもぬぐっても涙は静かに目からこぼれる。
なかなか止まってくれない。
なんで涙が止まらないんだ? この涙は何なんだ?
「やべッ」
なかなか止まらない涙に動揺したのか、俺は窓枠から身を乗り出したまま声を出してしたった。
そのとき。
あの桜の木の下にいた彼女は髪を揺らしながらこちらを向いて微笑んだ。
笑顔に胸が痛くなった。
俺は恋に落ちてしまった。