[完]Dear…~愛のうた~
_______

ーバンッ!!

私達はノックもしないでその場所に入った。

すると一斉に私達に視線が集まる。

「実彩ちゃん……」

弱々しく私の名前を呼ぶ直人は小さく見える。

「どういうこと!?これって、私達が悪いの!?」

杏奈の手を振り払って隆弘の前に来る。

隆弘は下を向いて私と目も合わせてくれない。

「これ……ゆかりん達は
私達が幸せになるのをかばって身を引いたの!?
私達の為に、ゆかりんは親子の縁を切って、
秀は仕事であるChargeを抜けたの!?」
「違う!!」

私の荒れ狂った声を遮ったのは
隆弘の苦しそうな、荒々しい声。

「確かにそれもある。
……けど、本当の理由はそれだけじゃない」
「え?」

それから私達は隆弘から
昨日の出来事を全て聞いた。

_________

「これは俺らだけじゃしょうがないんだ
俺達だけで解決できる問題じゃない。
あいつら二人が、決めたことなんだ……」

直人のその言葉で私は床に崩れ落ちる。

「なんで、なんで……
どうして?
どうしてこんなふうになっちゃったの?
どうして神様は私達に全然幸せをくれないの?
みんなが平等にあるはずの幸せ……
どうして、私達だけこんなに少ないのよぉ……」

私のそのまま泣き続けた。

きっと私は声が枯れても、涙が枯れても泣き続ける。

それはきっと、心が泣いているんだ。

「実彩、本当にごめん……」

そんな私を後ろからそっと抱きしめる隆弘。

どうして?どうして謝るの?

「俺が悪いんだ、全部……
俺がもっと強くて、守れるものが多かったら……」

後ろから啜り声が聞こえる。

「隆弘……泣いてるの?」

後ろを振り向こうとすると強く抱きしめられる。

「見るな、見ないでくれ……」

これは彼の少しの強がりなんだろうか……

私はその手をそっとよけて隆弘の目を見た。
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