[完]Dear…~愛のうた~
______

「おい!!実彩!!しっかりしろ!!」

何度も声をかけても返って来ない。

体を揺さぶっても何も反応しない……

「実彩!!」

俺は再び、大事な人を傷つけてしまった。

________

事の始まりは簡単だった。

俺はデパートに来ていて、
その時たまたま実彩を見かけた。

俺は実彩に話しかける勇気もなくて、
ただそのまま通り過ぎようとした時……

「……え?」

一気に体が揺れた。

いや、違う……

この建物が揺れているんだ。

「きゃー!!」

たちまち辺りから人がいなくなり、
立っていられるのも不可能になる。

“地震”

そう気づくのも遅くはなかった。

避難しようと、動こうとすると、
物があちこちから落ちて来て進めない。

そんな時、ハッとした。

「実彩……!!」

咄嗟に実彩がいたところを見ると……

「……!!」

誰かが頭を抱えて小さくうずくまっていた。

「実彩!!」

そう理解するのは遅くなかった。

そして近づこうと足を進めたその瞬間……

ーガーンッ!!

俺達の間に大きな本棚が落ちてきた。

そうだ、ここの先は、本屋だった。

倒れた本棚で実彩の姿が見えなくなる。

「実彩!!」

必死で名前を呼ぶと揺れが治まってきた。

そしてそのまま俺は立ち上がり、
実彩の様子を伺う。

「う……」

どこからか苦しそうな声が聞こえる。

「実彩!!」

実彩に駆け寄り無事か確認する。

「……!!」

そこで目にしたのは目を疑う光景……


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