[完]Dear…~愛のうた~
______

ーパーン!!

「おめでとー!!」

時が経つのは早くて、今日は私の誕生日。

「ありがと、みんな」

メンバーは杏奈とChargeのメンバー。

もちろん、そこに隆弘はいない。

祝ってくれて嬉しいのに、なぜか上手く笑えない。

彼一人だけで、こんなに違うものなんだろうか……

「実彩ちゃんも20かー……
本当は今日お酒でも持ってこようかと思ったんだけどね」

直人のお酒好きには苦笑い。

「やめろや。
ここは病院やで?」

真司くんの突っ込みにも苦笑い。

誕生日、これで楽しいのかな……

ふと、壁をジッと見つめる。

そしてそのまま、手を添えて隆弘の笑顔を思い出す。

その行動でみんなが一気に静まり返る。

「隆弘……」

何だかとても心が寂しくて苦しくて痛い。

この壁の先には隆弘はいるのに……
手は届かない。

今すぐ壁をこじ開けたいのに、
そんな勇気もない……

それが堪らなく悔しくて、右腕をギュッと握りしめる。

誕生日なのに、会えないの……?

私に、少しでも会いたいって思ってくれてる?

私は、あなたに会いたくて、会いたくて
仕方ないのに……

私、隆弘におめでとうって言ってもらいたいよ……

お願い……私のこと、忘れたりしないで?

「行くか」

立ち上がったのは光。

「……え?」
「会いたいんだろ?会いに行くぞ」

私にスリッパを差し出して待っている。

「でも……まだ、早いんじゃない?」
「そうや、まだあいつ荒れとるやろ!!」

真司くんと杏奈の声も私を困惑させる。

「けど、それくらい覚悟出来てんだろ?」

光の目は私を捉えて、目を離さない。

「あたりまえじゃん……」

私はそのままベッドから降りてスリッパを履く。

そしてそのまま光の前に行く。

「じゃ、行くか」

そのまま光は部屋を出て行く。

それに着くように、私もゆっくりとドアへ向かう。

「本当に大丈夫?」

後ろからは支えるように杏奈と直人が着いてくる。

真司くんは私を追い抜かして
光の隣で何か話している。

そしてそのまま隣の病室の前に来る。

そしてそのドアは大きく開かれた。


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