[完]Dear…~愛のうた~
「何だよ」

前と同じ声とは思えない程荒々しい声が耳に響く。

私はいつになく冷静に立っていた。

「みんな揃って何だよ!!説教なもう飽きたぞ!!」

すると光と真司くんが道を開ける。

そして、ゆっくりと前へ進む……

そして、私が目にしたのは……

変わり果てた、彼の姿。

「……なんで……」

驚いた様子で私を見る。

荒々しく座る彼は、もう優しさなんて
溢れていなかった。

そして顔を急変させて怒鳴った。

「何でいんだよ……もう顔なんて見たくねーよ!!」

その言葉が私の胸に痛い程刺さった。

「おい、隆!!何言ってんだよ!!」
「うるせー!!黙ってろ!!」

真司くんは今にも隆弘に飛びかかりそう。

でも、それより先に私が動いていた。

ーパーン!!

乾いた音が廊下にまで響き渡る。

「これで満足!?
私に殴られて、私に傷つけられて……
こんな私の為に自分を苦しめるの!?」

私はただ怒鳴っていた。

変わり果てた彼の姿がどうしても、許せなかった。

そしてそのまま包帯を取って痛々しい右腕を見せる。

「そんなに苦しいなら、もっとこの傷を見せてあげる!!
どうせなら、私が切断した腕でもあげようか?」

私は軽く微笑して隆弘を見下した。

「こんな最低な私に……
いつまでもすがりつかないでよ!!」

私とそう言い残してそのまま病室を後にした。

「実彩!!」

後ろから杏奈が私を追いかける。

そしてそのまま私は壁にもたれる。

「実彩……」

それを支えるように、杏奈は私を抱きしめる。

「私、最低だ……
自分で言って、自分で後悔してる……
一番自分を傷つけてるのは……私なのに……」

罪悪感の涙が止まらない。

「これで、何もかもおしまいだよ……
私も、隆弘も……私達の関係なんてなおさら」
「実彩……」
「だって、隆弘に嫌われないと……
隆弘のこと救えないんだもん、無理だよ」

私達はいつになったら幸せになれるんだろう……

「このまま、消えたいくらい……悲しいよ……」

冷え切った体を
そっと温めてくれる杏奈の温もりだけが、
私の唯一の支えになっていた。
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