[完]Dear…~愛のうた~
「……え?」

驚いて実彩を見ると俺と目を合わさないで
ホワイトボードに文字を必死に書いていた。

“声が出なくなって、自分が怖いの。
このまま、一生声が出ないって思ったら
私、何も出来なくなっちゃったの”

ホワイトボードを
何度も消しては書いて消しては書く実彩に
申し訳なさが沢山溢れてくる。

“ごめん、私今自分の事だけで精一杯なの。
隆弘のことなんて考えられない”

俺はそう書かれたホワイトボードを
実彩から取り上げて
そのままベッドに押し倒す。

“隆弘?”

驚きながらも口をそう動かす実彩。

「だから、別れたいって?」

今まで出したことないような
ドスの効いた低い声が部屋に響く。

その声に反応して一気に実彩の顔が固まる。

「実彩、俺をバカにしてるのか?
俺が別れを切り出されて簡単に別れると思ったか?」

実彩は大きく首を横に振る。

「じゃあ、質問を変える。
実彩、俺のこと好きか?」

すると実彩は何度も深く頷く。

「なら、どれくらい好きか言えよ」

そしてそのまま実彩の服に手をかける。

実彩は目を丸めて俺の行動を目にしている。

「言えよ。
じゃないとこのままどうなるか知らないぞ?」

それでも実彩は何とも言わない。

声が出ないことはわかってる。

けれど、口も動かそうとしない。

「実彩、答えろ。
どうせ、俺のことなんて
最初から何とも思ってないんだろ!!」

そしてそのまま勢い余って実彩の服を破る。

すると、その衝撃で服のボタンが
床にバラバラと落ちていく。

そしてそのまま露わになる豊やかな白い胸。

それでも実彩は何とも言わない。

「実彩、答えてくれ……
俺のことなんて最初から好きじゃないんだろ?」

するとやっと実彩が行動に出た。

実彩は俺を下から見下すように大きく頷いた。

それと同時に俺の何かが崩れ落ちて
本能のままに実彩の口を塞ぎ
実彩の体に手を差し伸べた。

いつもと変わらない敏感な反応に胸を痛ませながらも
俺の心の中では実彩の綺麗な声を永遠に求めていた。


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