[完]Dear…~愛のうた~
______

「実彩」

懐かしい声が聞こえる……

「実彩、起きろって」

どうしてあなたはここにいるの……?

私の隣には確かにあの時と同じ温もりがある。

「実彩ー」

何度も、私の名前を呼んで……?

「起きろー、実彩ー?」

そう、もっと、もっと……

「隆弘……」

そう呟いた時視界が一気に明るくなった。

耳には小鳥の鳴き声が聞こえる。

……夢?

眠たい目をこすってそのまま起き上がると……

……え?

私は思わず身を小さくした。

へ!?何で……!?

私はパニック状態になって目が一気に覚めた。

「実彩ー、あれ?起きてたのー?」

目の前には杏奈がスウェット姿に前髪を上げて
歯磨きをしながら私を見つめる。

慌てて近くのメモに書き込む。

“杏奈、何で私ここに”
「え?何言ってるのー?
飛行機遅いからうちに泊まるって言ってたでしょ?」

いや、それはそうなんだけど……

“いつ、私ここに来た……?”
「何言ってんの、飲みすぎて倒れたんでしょ?」

え?飲みすぎた……?

「全く病み上がりなんだから
もっと体のこと考えてよね。
喉悪化したらどうするの?」

いや、そうだけど……

“記憶がなくて……”
「え?記憶ないの?
あんなにみんなの話も聞かないで
そのまま変な動きしてたくせに」

本当に記憶がない……

“誰がここまで運んでくれたの?”
「……直人だけど?」

あ、なんだ……直人か。

って、何へこんでんのよ……

もう終わったことじゃない……

未練たらたらみたい。

たしか、私はChargeと杏奈で出発式をやっていた。

もちろん、光も隆弘も含めて……

けれど、私は喋ることも出来なくて
イライラしてそのままお酒頼んで……

それからのことはわかんないけど……

ただ、斜め前に隆弘がいたことは覚えている。

「ちょっと実彩ー?
ぼーっとしてたら遅れるよ?」

その声で私は慌ててシャワーに駆け込んだ。

「隆だった、なんて気づいてないよね……」

杏奈が心配そうに
私を見つめているなんて知らずに……


< 172 / 207 >

この作品をシェア

pagetop