[完]Dear…~愛のうた~
「何、泣いてんだよ……」

私は彼の言葉で我に返る。

私はいつの間にか頬に冷たい物が走っていた。

私、泣いてる……

「実彩……」

杏奈の声が遠くから聞こえる。

そして私は彼の目をしっかりと見た。

「何だよ……何でお前が泣くんだよ!!
俺が泣きたいくらいなんだよ!!」

知ってる、知ってる、そんなこと知ってるよ……

「何で、お前が……」

そう言って彼は目線を逸らす。

あなたは私の涙が嫌いだから、
きっとあなたは私を見れなくなるんでしょ?

そしてそのまま携帯に手を指を滑らせる。

“もう、乗ろう?
このまま嫌な旅にしたくないから”

私はそのまま思いっきり涙を拭き取って
ロビーへ向かった。

本当に素直じゃないな……

普通に“こんなことしてもつらいだけ”
って伝えればいいのに……

私には、もうそんな勇気も、心には残っていない。

_______

航空機が離陸して約一時間。

「実彩ちゃん」

隣に座っていた光に話しかけられた。

私が顔を合わせると困ったような顔をして私を見た。

「あのさ、この前のことなんだけど……」

この前……

いつのことだろう。

思い返すことが沢山あり過ぎてわからない。

「ほら、あの、勝手にキスして……」

その言葉に言葉がビクッと反応した。

反射的にしてしまったのだ。

そしてそのままサッと顔を伏せる。

「あ、ごめん。思いださせて……」

私は下を向きながらもフルフルと首を振る。

「俺、あの時どうかしてたんだ。
辻のことで泣いてる実彩ちゃん見てられなくてさ」

そんなこと、知ってる……

だって、光は私のこと好きって言ってたから……

「だから、あいつのことで泣いてるのがムカついて
ついあんなことしちまったんだ」

わかってる……光はそこまで悪い人じゃない。

それを私はちゃんとわかっているから……

「だから、俺もうあんなことしない為に
これだけは言っておこうと思って……
前も言ったけど……俺、実彩ちゃんが好きだ」

私はその言葉でようやく光の顔を見ることが出来た。


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