[完]Dear…~愛のうた~
私はそのままその場所目掛けて走り出した。

「ちょ、実彩ちゃん!?走ったらダメだって!!
医者にもそう言われただろ!!」

けれど、私はそのまま走る……

だって、そこには……

“隆弘!!”

心の中で必死に名前を呼び体を揺する。

目の前もってには床に倒れている
隆弘とそれを囲む何人かの警備員。

「え、辻……?どうしたんですか!?」

私の後ろを着いてきた光が
私の代わりに警備員の人に聞く。

けれど、ここは海外。

日本語が通じる訳なくて、そのままスルーされた。

私は一時期留学した為
英語がそこそこ喋れるが声が出ない。

あー、もう!!何で出てくれないの!!

打つのも面倒くさい為
私は誰かただ英語を話してくれるのを待っていた。

そんな時……

「どしたんや?お二人さん」

私達の異変に気づいた3人が
心配そうに駆け寄ってきた。

「何か、辻が倒れたのかわからないけど、
警備員に運ばれてるんだ」

すると真司くんが一歩前に出た。

気がつくと周りにはやじうまが沢山集まってきている。

「Excuse me」

……へ?

私は思わず真司くんの顔をみる。

すると特徴のあるハスキーな声からは
ペラペラと発音の良い英語が話されている。

もしかして、真司くんって英語ペラペラ?

何で?ハーフ?なんて思っていると
一気に真司くんの目が丸くなった。

「……really?」
「YES」

淡々と繰り返される英会話に
ポカーンと口を開ける。

すると真司くんが何かを言いたそうな顔で
私達のほうに振り返った。

「どうしたの、真ちゃん……」

そして次の言葉で私は思わず倒れている隆弘を見た。

「隆、熱中症や」

……え、熱中症?


< 176 / 207 >

この作品をシェア

pagetop