[完]Dear…~愛のうた~
「ただの脱水症状やって。
全く、世話のかかる奴やな」

その一言でみんな一斉に安堵の笑い声が聞こえる。

けれど、私は……

「え、実彩どこいくの!?」

そのまま振り返ってその場から足を動かしていた。

私だけ心配して……バカみたい……

熱中症って、ただの寝不足からでしょ?

何で、こんなに心配してるのよ……

「実彩ちゃん」

いつの間にか隣に来た光は私の腕を掴む。

それにイラッと来て下から睨みつけた。

「実彩ちゃん、どうした?」
“一人にして”
「けど、ここ海外だし」
“大丈夫だから。
とりあえずあそこのビーチにいるから。
何かあったらそこに来て”

そしてそのまま光の腕を払って
目の前にある大きなビーチに向かった。

それと同時に思い浮かぶのは、
あの険しそうな顔。

ただ、暑くて顔を歪めただけでしょ?

その言葉とは反対に私の心は隆弘を心配している。

それと同時に浮かび上がったのは、
隆弘の私を心配してくれるあの顔……

“もうヤダ……”

私はそのまま足を止めて泣き始めた。

何で?何でこんなに隆弘ばっかり考えてるの?

バカみたいじゃない……

彼はもう、
私のことなんてどうでもよくなってるくせに……

だから、別れを切り出した。

そんなことわかってるのに……

心の中ではそんなこと思ってないって、
どこかで否定し続けている。

どうしよう、それじゃなにも……

“変わってないじゃん……”

いつか忘れる痛みならば
このまま消え去って欲しいのに……
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